クルマづくりには多様な力が必要。 どんな障がいがあっても、 活躍できるチャンスが必ずある。
S.F 聴覚障がい
クルマ開発センター
第4電動パワトレシステム開発部
第42システム開発室 主任
2007年入社

障がいがあっても、好きなことを
前向きに楽しみたいとトヨタへ。
私は生まれつき聴覚に障がいがあり、両耳が聞こえません。補聴器をつけることで日常生活にほとんど支障はありませんが、ときどき周囲の会話が聞き取りづらいことがあります。幼い頃はそうした様子を友人たちにからかわれ、辛い思いをしたこともありました。しかし小学校高学年ぐらいから、障がいをネガティブに捉えていても仕方がないと開き直るようになり、興味のあることに前向きに楽しもうという姿勢に変わっていきました。モノづくりが好きだったこともあり、大学進学時には工学部を選択して機械工学を専攻。大学院にまで進んで身体の不自由な方々をサポートする福祉系のロボット制御の研究に取り組みました。就職にあたっては研究内容を活かせる福祉機器のメーカーも考えましたが、それ以上に私が憧れていたのは自動車メーカー。物心ついた頃からクルマが大好きで、幼稚園の卒園文集にも将来クルマをつくる人になりたいと書いていたほど。そして技術者をやるからには、多くの人に手に触れるモノを作りたいという想いもあり、世界的な自動車メーカーであるトヨタを就職先として志望しました。面接時に耳が不自由なことをあらかじめお伝えしましたが、そうしたハンディキャップが選考に影響することなく、モノづくりへの情熱を買っていただいて採用になりました。そして入社後は、現在に至るまで四輪駆動車の動力配分制御のシステム開発に携わっています。
やりたいことをアピールし、
「世界初」のシステム開発にも挑戦。
配属の際、私は学生時代に得た制御の知識を活かしてクルマづくりに関わりたいと希望しました。そして、せっかく自動車メーカーに入社したのだから、業務でクルマが運転できる部署がいいと。私はクルマを運転するのも好きで、免許を取得して以来、自分で思い通りに操縦できるマニュアル車をずっと乗り継いでいます(笑)。自分が考えた制御を、自分で運転して検証できたらどんなに面白いだろう。そう思って「こんな仕事がしたい」と会社にアピールしたところ、配属されたのがいまの開発部署。ここでは自分の手でプログラムを作成し、それを搭載した試験車をテストコースで走らせて評価するところまで関わることができ、まさに私が望んでいた環境でした。こうしてキャリアを積むうちに「世界初」のシステムを開発するチャンスにも恵まれました。新型RAV4に搭載された「ダイナミックトルクベクタリングAWD」がそう。走行状況に応じて四輪駆動と前輪駆動を切り替え、動力のロスをなくすことで燃費の向上を図る従来のシステムに、トヨタ独自の新機構を組み込んでさらに進化させた業界初のシステムです。この制御システムの中心メンバーとして携わりましたが、一筋縄ではいかず、当時は延々と試行錯誤を繰り返す毎日でした。北海道の士別のテストコースに1カ月弱こもって、現地でひたすら評価と検証を重ねたことも……苦労しただけに、このシステムを完成させた時は本当に大きな達成感がありました。


周囲の理解やサポートにも感謝。
トヨタだからここまで自分を高められた。
トヨタに入社してから、障がいがあることをマイナスに感じたことは一度もありません。これまで技術者として自分のやりたいように開発ができる環境を与えてもらっていますし、またトヨタに入社してから一貫して四駆の動力制御開発に関わっており、技術も経験も蓄積していくなかで周囲からも色々な仕事を任せていただけるようになり、誇りを感じながら仕事に取り組んでいます。さらに幸運にも世界初のシステムを手がけ、世間から賞賛されるような経験も味わうこともできた。それもトヨタだからこそ叶えられたことだと思っています。周りの仲間たちも私の障がいに理解を持って接してくれます。会話中、相手の言葉が聞き取れずに尋ね返した時も快く応じてくれますし、会議の時も私のためにいちばん聞き取りやすい席を空けておいてくれる。会社からも、音声を認識して文字表示するツールの活用などを提案してくれますし、そうした配慮にはとても感謝しています。こうした環境のもとでさらにキャリアを広げて、未来のクルマづくりに挑戦していきたいと思っています。
クルマを作るためには多様なプロセスが必要であり、企画、設計、試作、測定、評価……と実にさまざまな仕事があります。たとえ障害を抱えていても、自分ができることでクルマづくりに関われる場が必ずある。事実、トヨタでは私のように障がいのある社員がさまざまな部署で活躍しています。新しいクルマを作りたいという夢をお持ちなら、どんな方でもそれを叶えるチャンスは大いにありますので、ぜひトヨタの門をたたいてほしいと思っています。
MESSAGE上司からのメッセージ
Fさんとは1年ほど前から同じチームで一緒に仕事をしています。彼は趣味でトライアスロンに挑戦していて非常にエネルギッシュ(笑)。聴覚に障がいがありますが、それは単に個性のひとつだと捉えていて、私もメンバーもまったく特別視していません。それぞれが自分の強みを発揮し、チームで助け合いながら大きな目標に向かっていくのがとトヨタらしさであり、それがここで働く大きな魅力だと感じています。
部署名、役職、業務内容等は、
インタビュー当時のものです